
PERIODONTICS 歯周病治療のご案内

歯周病は自覚症状が乏しく、時間経過とともに気づいた時には重症化している、といったことが少なくありません。初期の頃にはほとんど症状が見られませんが、日常的なブラッシングの磨き残しや食事・喫煙などの悪い生活習慣が蓄積されることで、歯茎にダメージが及び、最悪の場合、歯が抜け落ちてしまいます。
また、歯周病は糖尿病、心臓疾患など全身の健康にも影響を及ぼすと言われています。口腔内を最適な状態で維持することは、新型コロナウイルスをはじめとしたさまざまなウイルスの予防にも効果的です。正しい知識とセルフケアを習慣化し、生涯ご自分の歯でしっかりお食事ができるよう、予防しましょう。
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歯周病の進行と症状
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歯肉炎
歯茎に炎症が見られますが、この段階では歯を支える歯槽骨やそれ以外の歯周組織には影響は及んでいません。冷たいものがしみたり、歯磨き時に出血するなどの症状が見られますが、正しいブラッシング指導やクリーニングを受けることによって改善が見込めます。
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軽度歯周病
歯肉炎が進行し、歯茎の腫れが目立ってきます。また、歯と歯茎の境目にある歯周ポケットと呼ばれる隙間が深くなります。多くの場合、口内細菌が固まって歯に付いた歯石の沈着が見られ、ブラッシング指導と専用の機器を用いた歯石除去が必要となります。
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中等度歯周病
歯周ポケットがさらに深くなり、歯茎の内側まで歯石が溜まってしまう状態です。中等度では腫れや出血がひどくなり、口臭も気になり始めます。歯と骨をつなぐ歯周組織まで炎症が及んできていますので、迅速な治療が必要な段階と言えます。
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重度歯周病
歯茎の腫れや出血、口臭に加え、歯のぐらつきが見られます。歯槽骨などの歯周組織が炎症によって破壊され、かろうじて歯が刺さっているといった状態となります。噛むたびに痛みを感じ、膿んだ味もするなどさまざまな自覚症状があります。また、細菌が血管から侵入し、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病の進行を悪化させるなど全身への健康リスクを高めてしまいます。
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歯周病の流れ
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歯周基本検査
歯周ポケットの深さや歯のぐらつき、歯肉の炎症度など専用のプローブという器具を用いて測定します。初回に記録をつけることで今後の改善具合の指標にしていきます。また骨の減少をチェックするためにレントゲン撮影も行います。
記録の結果は患者様にもお渡しし、可視化されたものをご覧いただくことで客観的に今の状態を把握していただきます。 -
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基本治療
歯周病の改善には第一に、お口の中をしっかりお掃除し、細菌の数を減らしていくことです。そのために歯科衛生士によるTBI(ブラッシング指導)を行い、ご自身でも毎日正しい歯磨きができるよう、その方法をお伝えします。
同時にスケーリングと呼ばれる歯石取りを行い、歯肉の炎症を押さえます。 -
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再検査
基本治療で実施したTBIとスケーリングの効果が出ているか再度検査を行います。数値を測定し、初回記録と照らし合わせ、お口の中の状態が改善しているようでしたら治療は終了し、通常の定期的なメンテナンスで経過観察します。
一方、炎症が抑えられず、依然歯周ポケットが深い状態が改善されないなどの場合は、歯周外科の処置を兼行していきます。 -
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歯周外科処置
再検査後も改善傾向が見られない場合は、スケーリングなどで取り除けない深い箇所に歯石が付着している可能性が考えられます。その場合は歯茎を切開して外科的な処置を施します。

歯周外科

歯周病が中~重度へ進行し、基本治療では改善が期待できない場合に以下のような外科的な処置を行うことで機能の回復につなげます。
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歯肉剥離掻爬術(フラップ手術)
歯茎を直接切り開き、歯の根を露出させて、深い歯周ポケットに付着しているプラークや歯石を除去します。直接目視することで確実に取り除き、歯の根の部位を徹底的に清掃します。
治療は麻酔を用いて行いますが、比較的短時間です。施術後は開いた歯肉を戻して縫合し、1週間~10日後に抜糸します。その後、歯周病の再検査を行い、歯周ポケットが改善していれば、通常のメンテナンスで経過観察していきます。 -
歯周組織再生療法
炎症が悪化し、歯周靭帯や歯槽骨が溶かされてしまった場合に行う外科処置です。一度失われた骨が自然に再生することはないため、特殊な薬剤を用いて骨の再生を促します。
歯の根を切開し、露出した歯根を丁寧に清掃のうえ、薬剤を塗布して縫合します。1~2か月程度で骨や歯根膜の再生が期待でき、治癒につなげていきます。
歯周病と全身疾患の関係性
歯周病はお口の中の病気という認識をされている方が多いと思いますが、決してそれだけではありません。発生する歯周病菌はお口の中から全身へ回りはじめ、以下のような病気にも関係してくると言われています。
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糖尿病
歯周病菌は歯茎の血管を通して体内へと入り込み、サイトカイニンという物質が活発化することで糖尿病の悪化を誘発します。歯周病と糖尿病は互いに悪影響を及ぼし合う疾患と言えますが、逆に言えば、歯周病を改善することで糖尿病の進行を改善・コントロールすることも可能になります。
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心筋梗塞や脳梗塞
血管によって全身に運ばれた歯周病菌は脳や心臓の血管にこびりつき、沈着物によって動脈硬化を誘導していきます。その結果、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患、脳梗塞の発症にも影響があると言われています。また、脳内の血管を詰まらせることは、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症を悪化させてしまうこともあります。
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誤嚥性肺炎
食べ物は食道を通って胃へと運ばれますが、誤って気管や肺に入ってしまうことを誤嚥といいます。高齢者の方など飲み込む機能が低下してしまうと、歯周病菌が食べ物と一緒に肺などへ入ってしまい、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。
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早産や低体重児出産
お口の中にいる歯周病菌が胎盤を通して、赤ちゃんへ感染してしまうことがあります。歯周病菌は早産や低体重児出産のリスクがあると言われているため、妊娠中の定期検診やお口の中のケアもしっかり行いましょう。
※妊娠中・授乳中の方へ。「マタニティ歯科ページ」をぜひご覧ください。
COVID
新型コロナウイルスなど
様々なウイルスに関わりが
様々なウイルスに関わりが

上述のように歯周病菌はお口の中にとどまらず、全身へ影響するとお伝えしました。同様にインフルエンザや新型コロナウイルスも歯周病菌があることによって増幅され、喉や舌を保護している粘液の糖タンパク質を溶かす分解酵素によってウイルスが体内へ侵入する手助けをしてしまいます。
※国会において報告された「歯周病と新型コロナ感染の重症度との関連性」論文では、新型コロナウイルスに罹患した人は検査数258のうち33人が重症化したのに対し、歯周病のない人では検査数310のうち重症者は7人とされています。また死亡リスクでも歯周病ではない健常者と比べ、約8.8倍の死亡リスクが増加すると報告されました。
このように歯周病はウイルスと無関係ではなく、適切なケアでお口の中を清潔に保つことは、病気の予防にも関わってきます。「丈夫な身体づくりはお口から」と言っても過言ではないので、しっかりと毎日のセルフケアを行い、歯周病にならない口腔内環境を築きましょう。